Thursday 1 November 2012

Education

Education.
お,硬派なネタが来たな,と思いましたか?
残念,社会派なことを書く気はあんまりありません.有意義な提言のつもりもありません.
まあ,ゆるゆると,世迷言を.


Sim City というゲームがあります.(僕が今喋るのは Sim City 4 について.)
有名なゲームですが,知らない方のために解説しますと,
ある未開の地の"市長" (日本でいう市長よりはかなり権限が強いと思いますが)を演じ,
都市に道路を作り,住宅区画や商業区画・工業区画を作って人と産業を呼び込み,
電力と水を供給し,ゴミを処理し,警察,消防,病院,教育,交通機関を提供して,
税率を設定し,都市を発展させ(或いは発展させず)てゆく,
箱庭的な要素も多分にあるゲームです.主なプラットフォームはPC.
隣接する都市は互いに接続し,人や雇用のやり取りが行なわれます.

ある時,僕は貧乏人を集めた都市をつくろうと思い立ちます.
人口密度の高い独特の景観が作れるかもしれませんし,
地域全体を活性化させ,隣近所の都市に裕福な住民を呼び込むこともできるかもしれません.
それに製造業は多くの場合,騒音や汚染のために裕福な住民からは嫌われるので,
この都市にそれを集めれば地域の工業の振興のためにもいい影響があるでしょう.
税率は,住民税,商業,工業にわかれていて,それぞれ所得水準で 3つに区分して設定できるので,
裕福な住民と中所得層への税率を目一杯上げ,低所得層の税率は据え置きましょう.
仕事も必要ですが,上記の目標を達するため,
また実際全体として所得の低い都市には オフィスやハイテク工業は魅力を感じないようなので,
主に製造業を立地させましょう.教育レベルが低いとハイテクとかには就職できませんしね.
こうした都市の場合しばしば過密気味になって深刻な交通問題が発生するので,
ある程度先のことを考えながら,太めに道を作ったり線路を引いておいたりします.
他の交通機関のためにスペースを空けておくのも一案.そのうち収入源になります.

僕は市民を搾取して喜ぶタイプの人間ではないので,
学校と病院は最初に立てますが,経営が安定してくれば高校や図書館を立てます.
皆さん意外と読書家で,図書館は収蔵図書数以上の本を貸し出したりします.
病院は,人口密度が高いのと,皆様の収入がそれほど高くないことによってすぐ混雑しますが,
めげずに十分な量を立てます.
さらに安定して来,また住民の教育レベルもある程度上がってくれば,
市立大学を立てることができます.総合大学もよいですが,あれはやたらに場所を食うので,その辺は相談の上.
かくして,収入レベルは低くとも,十分な病院と教育機関を擁し,
そこに流れ込んでくれば比較的健康に暮らせ,しかも教育の機会が潤沢にある,理想の都市が完成するわけです.

しかし,ここで問題が発生します.市民の失業です.
渋滞はすでに十分な問題になっており,
その結果通勤時間に嫌気が来た住民たちは しばしば離職しますが,
地下鉄にバス,鉄道,更にはモノレールも設置し,条例で予算を投入してそれらの利用も促し,
交通状況は幾分かは改善されてきているはずです.
健康,教育いずれも十分.土地としての幸福度は十分高い.一体なにが問題なのか.

ここへ来て,答えは比較的単純に出ます.彼らの教育レベルにあった職がないのです.
もともとこの都市の産業 は主に製造業と小さな小売店.
今や教育が行き届き,図書館,美術館,さらに大学を擁するこの都市で育った子供たち.
彼らはもはや,製造業やちっぽけな小売店で働きたいとは思わないのです.
彼らの勤労意欲をかきたてる,例えばハイテク産業やオフィスの類,
いずれも,都市のコンセプト的に,
また建ったところで大気汚染や需要のなさによってすぐに廃業すると思われたために,
意図的に排除されてきたものです(このことについては "そういう都市" なのでこれでよい).
こうなると(都市のコンセプトを変えないなら)隣町で職を探してきてもらうしかないのですが,
そうなると今度は通勤距離が問題になってくるようです.
市長としてはこれはこれで,貧乏人が生まれ,あるいは流入してきて,
彼らが育つと共に,ここで身につけた教育を武器に巣立ってゆく都市,として満足.
(現実の世の中にそういう都市を作っていい都市と思えるかは別にして.)
運輸局も人口密度を背景に大きく黒字を稼ぎ,なかなかいい感じに成長しています.
失業者対策は…そうですね,難しいところ.住宅地を削ってショッピング街にでもしてみようか.




最近,特に(理学や文学の?)修士や博士は,就職が困難,というような話を時々聞きます.
少なくとも,それらの "教育" の成果が(これらが "教育" と呼ぶべきものかは別の問題として),
必ずしもキャリアを形作る上での強力な武器になっている,という訳ではなさそうです.
人生の "成功"に繋がるという確信を持ってそうした環境に身を突っ込めるわけではなさそう,
といってもいいかもしれません.
無論,所謂人生の "成功" とは,或いはその価値は,とか,
"高度な教育" → "社会的価値" という図式は果たしてそもそも(幻想としてさえ)存在し得たのか,とか,
そういう話もあります.
また今 " " でくくった言葉にしても,十分に説明を尽くさないと恐らく誤解を招くでしょうし,
僕の言葉遣いそのものが,この件についてはあまりに naive であるという批判もあるいはあたっているでしょうが,
今はそういう精密なお話をしようというのではありません.
{とくに,僕の使った "キャリアを形作ること" や "社会的価値"は,
 "意識高い" 人々の使いそうな用語で,そうした派手な言説の手垢がついている部分もあってか,
 今まさに,誤解を招いているだろうという感じがしなくもありません.
 以前も恐らく,この辺の言葉遣いのために若干理解に齟齬をきたしたことがあり,
 従って僕は今,この文章をこのまま放置するべきではないのでしょうが,
 かといってその意味をつまびらかにするには気力や何やが足りません.
 だから,とりあえず僕が "意識高"そうな,
 或いは学問を学問として見ていない言葉の使い方をしている感じがしたら,
 少なくともそれは,非は僕の方にあるけれど,ともかく誤解に近いものだ,
 と書くにとどめましょう. }

ともかく,なんかこの感じが,さっきの市民たちの失業に似ているな,と思ったことがあるのです.
日本が後進的,とか,十分知的産業が育ってないとか,(真偽は別にして)そういうことをいいたいのではなく,
ともかく,感覚として.
そしてそれはひょっとしたら宿命的なもの(製造業が全くない世の中というのもありませんから).
(この製造業は Sim City でいう"製造業"のことですよ.)

似てるな,というこの感覚.そしてちょっと残る違和感.
それはこの言説に対してではなくて,対象の定まらないものですが.
ともかく, あまり考察を深めないまま,
教育,と題した Sim City のステマは,これでおしまい.

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