Tuesday 5 March 2013

夜道

夜の道はいい.車の多い夜道もいいし,ときたま車が通る音が聴こえるようなのもいい.
日が暮れて仄暗いころもよいし,深夜,街がひっそりと眠っている道もいい.
昼間は賑わっている道で,車通りがほとんど絶えて,ただ信号が静かに時を刻んでいるのもいい.
そういう時には道路の真ん中ですこし長い間立ち止まったりしてみたりする.街灯が路面に映える.
家が立ち並ぶなかの細い道から,周りの家々の明かりを眺めるのもいい.
もしくはもっと深夜になって,家々が静まり返ったなか,ゆっくり暗い道を歩くのもいい.
季節は冬が好ましいけど,夏のじっとりとした熱気を密かに持った夜気もよい.
ゆっくり息を吸ってみよう.
通っていた高校の付近は唯一のコンビニが潰れるくらいの田舎,あるいは山際で,
徐々に肌寒くなってくる頃になると,部活帰りの時間ではすっかり暗くなったものだった.
そんな道を友人と歩くのもいい.話しながらでも,なんとなく黙りながらでも.

早朝の道もいい.冬のなんとなく白っぽい昼下がりや,
夏の,日差しが現実感を溶かしさってゆく3時頃もいい.夕日を浴びながら歩くのもいい.
野山の道もいい,都会の大通りもいいし,その先行き止まりかも知れないような細い道もいい.

風とか光とか季節とか街とか,そういうものを持たない道はない.道はいいものだ.
こうしたものに感じる強烈な愛おしさのようなもの,
いつからか僕の心をしばしば占めるようになっているそれ,
僕が生きているのは,半分くらいそのためなんじゃないかと思う.

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